じっと見つめる現象:ただの好奇心ではありません
真夜中にふと目が覚めると、部屋は薄暗く、なぜか何かの気配を感じます。呼吸のひとつひとつを見守っているような存在です。ゆっくり目を開けると、そこにいるのは愛猫。ベッドの端にちょこんと座り、身じろぎもせずにこちらを見つめています。まばたきもしません。動きもしません。鋼鉄さえ溶かしそうなほどの強いまなざしで、ただじっと見ているのです。サスペンス映画のワンシーンのようにも思えますが、実はこれは猫と暮らす人なら誰もが経験する、ごくありふれた(そして少し戸惑う)出来事です。では、そのまなざしの裏には本当は何があるのでしょうか?
生存本能:守ってくれる存在を見守る
猫を理解するには、まず猫が自然界では捕食者であると同時に、獲物でもあることを思い出す必要があります。家の中では、猫は飼い主をいちばんの安心のよりどころと考えています。よく言われる説明のひとつは、多くの猫が一種の予防的な見張りとして、眠っている飼い主を見守っているというものです。人は眠っているとき、もっとも無防備な状態になります。飼い主がリラックスしていれば、周りは安全だということ。でも急に動くと、猫はすぐに警戒モードに入ります。
まだ証明されてはいないものの、よく知られた仮説として、群れが休んでいる間も周囲に気を配るという、祖先から受け継いだ習性の名残りだという考え方があります。そう考えると、飼い主を見つめている猫は、自分なりの見張り番を務めているのかもしれません。確かなのは、猫がほかでもない飼い主を見つめているなら、飼い主は猫にとって大切な存在だということです。
言葉を使わないコミュニケーション:ゆっくりまばたき
猫と見つめ合っていると、ときどきとてもゆっくり目を閉じることに気づくでしょう。これが有名な「猫のキス」です。サセックス大学の研究(Humphreyら、2020年に『Scientific Reports』誌で発表)では、飼い主がゆっくりまばたきをすると猫も同じようにゆっくりまばたきを返すこと、そして見知らぬ人からゆっくりまばたきをされた後は、その人に近づきやすくなることが確認されました。研究者たちによると、このしぐさは猫と人のあいだのポジティブな感情のコミュニケーションとして働いているようで、いわば笑顔のようなものです。穏やかな視線にゆっくりまばたきが加わるのは、猫が飼い主と一緒にいて安心しているサインなのです。
実験は2つ行われ、合計45匹の猫(1つ目に21匹、2つ目に24匹)が参加しました。試してみたいときは、目を細めて猫を見ながら、ゆっくりまばたきをしてみましょう。多くの猫が同じように返してくれます。夜にじっと見つめてくるときも、穏やかな様子なら、たいていは飼い主と過ごす時間を楽しんでいるだけです。
おなかがすいた? それともただ退屈?
もちろん、わかりやすい理由も無視できません。猫は薄明薄暮性の動物で、明け方と夕方、つまり獲物となる小動物がもっとも活発に動く時間帯に活動のピークを迎えます。朝5時に猫がじっと見つめてくるなら、体内時計が朝ごはんを求めている可能性が高いでしょう。猫は、遅かれ早かれ飼い主がその視線のプレッシャーに気づくことを知っています。これこそ「オペラント条件づけ」の典型です。飼い主が起きてごはんをあげると、猫は鳴くよりじっと見つめるほうが効果的だと学ぶのです。
「見つめられる」飼い主さんへのアドバイス
- 怖がらないでください。愛着のサインです。
- 猫を驚かせるような急な動きは避けましょう。
- 頻繁で気になる場合は、寝る前に思いきり遊んであげて、エネルギーを発散させましょう。