猫のエチレングリコール中毒:不凍液の誤飲と致死性急性腎障害
エチレングリコール中毒(自動車のラジエーター不凍液や保冷剤に含まれる主成分)は、猫の臨床現場において最も致死率が高く急速に進行する中毒性緊急疾患の一つです。甘みがあるため、ガレージや路上にこぼれた液体を猫が好んで舐めてしまいます。体重1kgあたりわずか約1.4mLという極めて微量の摂取であっても、3時間以内に解毒治療を開始しなければ不可逆的な急性腎不全により死に至ります。
このガイドは獣医師の代わりにはなりません。夜間・救急動物病院

このガイドの内容
1. エチレングリコールとは何か・なぜ猫に猛毒なのか
エチレングリコールは、甘味を持つ無色の液体で、不凍液や冷却水に多用されます。摂取後、肝臓のアルコール脱水素酵素(ADH)によってグリコール酸やシュウ酸へと代謝されます。
シュウ酸は血液中のカルシウムと結合して不溶性のシュウ酸カルシウムとなり、腎尿細管に析出して組織を壊死させ、劇症型の急性腎不全と重度の低カルシウム血症を引き起こします。
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2. 臨床ステージと危険な症状
中毒症状は3つの段階を経て急速に悪化します:
- 第1期(摂取後0.5〜12時間 - 神経症状): まるで酒に酔ったようなふらつき歩行(運動失調)、沈鬱、嘔吐、多尿、低体温。
- 第2期(摂取後12〜24時間 - 心肺症状): 神経症状が見かけ上落ち着く一方、重度のアシドーシスが進行し、頻脈、呼吸困難、肺水腫が現れます。
- 第3期(猫では12〜24時間以降 - 急性腎不全期): 尿が完全に止まる無尿、激しい尿毒症、口腔内潰瘍、腎臓の強い疼痛、痙攣、昏睡、死に至ります。
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3. 動物病院での緊急確定診断
一分一秒を争う迅速な検査が行われます:
- 尿沈渣検査: 特徴的な一水和物シュウ酸カルシウム結晶の確認および尿比重の低下。
- 血液生化学・血液ガス検査: 高アニオンギャップ性代謝性アシドーシス、低カルシウム血症、BUNおよびクレアチニンの劇的な急上昇。
- ウッド灯(ブラックライト)検査: 不凍液に含まれる蛍光色素(フルオレセイン)が猫の口元、前足、尿で蛍光発色します。
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4. 特異的解毒薬と救命プロトコル
摂取直後であれば催吐処置や胃洗浄、活性炭投与を検討します:
- アルコール脱水素酵素阻害薬: 特異的解毒薬であるホメピゾール(高用量投与)、または酵素親和性が100倍高い医療用エタノールを持続静脈投与し、有害な代謝産物の産生をブロックして尿中へそのまま排泄させます。
- 積極的静脈輸液: 腎血流を維持し尿細管閉塞を防ぐための高流量輸液と、アシドーシス改善のための重炭酸ナトリウム投与。
- 血液透析: すでに無尿に陥っている場合、救命の唯一の選択肢となります。
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5. 家庭内での絶対的な予防策
誤飲事故を防ぐことが最大の防御です:
- 漏れやこぼれの即時清掃: ガレージ床面の冷却水漏れは猫砂で吸着し、洗剤で完全に洗浄してください。
- 密閉・高所保管: 不凍液の容器は確実に施錠できる棚に保管してください。
- プロピレングリコール製剤の選択: 毒性が極めて低いプロピレングリコール主体の不凍液を選ぶことが推奨されます。
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出典・学術的参考文献
- American College of Veterinary Emergency and Critical Care (ACVECC). https://acvecc.org
- Merck Veterinary Manual - Ethylene Glycol Toxicity in Animals. https://www.merckvetmanual.com/toxicology/ethylene-glycol-toxicosis/overview-of-ethylene-glycol-toxicosis
- Cornell Feline Health Center - Toxic Plants and Household Chemicals. https://www.vet.cornell.edu/departments-centers-and-institutes/cornell-feline-health-center
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