猫の慢性腎臓病:症状、診断、余命と自宅でできるケア

慢性腎臓病(CKD)は高齢猫にとって最も身近な病気のひとつです。10歳以上の猫の30〜40%、15歳以上では70%以上が罹患していると推定されています。破壊されたネフロン(腎組織)を元に戻すことはできませんが、早期に発見して適切なケアを行えば、診断後も何年も快適で穏やかな日常を守ることができます。

出典

· 出典
このガイドは獣医師の代わりにはなりません。獣医師に行くべきサインを見る ↓

すぐに動物病院へ行くべき緊急サイン

慢性腎臓病は通常ゆっくりと進行しますが、急性の尿毒症発作を起こすと命に関わります。以下の兆候が見られたら、すぐに受診してください:

  • 丸1日以上全くごはんを食べない(食欲廃絶): 猫は24〜48時間以上の絶食で肝リピドーシス(脂肪肝)を併発する危険があります。
  • 1日に何度も吐く: 急激な脱水症状に陥る恐れがあります。
  • ぐったりして首が下がったまま起き上がれない: 重度の低カリウム血症や深刻な貧血の可能性があります。
  • 痙攣、ふらつき、突然目が見えなくなる(瞳孔散大): 尿毒症性脳症や急激な高血圧による網膜剥離のサインです。
  • 口から強いアンモニア臭がする、舌に潰瘍がある: 尿毒素による深刻な自家中毒状態です。

> 重要: 高齢の愛猫が急に水をたくさん飲むようになったら、痩せてしまうのを待たずに検査を受けてください。かかりつけ医がいない場合は動物病院検索をご利用ください。

日当たりの良い窓辺の水飲みボウルの横で柔らかい毛布の上で穏やかに休むシニア猫
写真: Nekolife
このガイドの内容

猫の腎臓で何が起きているのか?

腎臓は猫の体内環境を維持する大切な臓器です:

  1. 老廃物のろ過と排出: たんぱく質代謝で生じる毒素(尿素窒素やクレアチニン)を尿として出します。
  2. 体内の水分保持: 尿をぎゅっと濃縮し、脱水を防ぎます。
  3. 電解質バランスの調整: ナトリウム、カリウム、カルシウム、リンの濃度を一定に保ちます。
  4. ホルモンの分泌: 赤血球を作るエリスロポエチンや血圧を調整するレニンを分泌します。

慢性腎臓病では、フィルターの役割を果たす組織(ネフロン)が徐々に壊れていきます。残された正常なネフロンが過剰に働いて補うため、全体の66〜75%以上の機能が失われるまで一般的な血液検査で異常が見つからないという特徴があります。

初期症状と病気の進み方

猫は体調不良を隠す習性があるため、初期の変化は老化のせいにされがちです:

  • 多飲多尿(たくさん飲んでたくさん出す): 尿を濃縮できなくなり水分がどんどん抜けていくため、脱水を防ごうと蛇口やコップから必死に水を飲みます。
  • 背中の筋肉が落ちる: お腹はぽっこりして見えても、背骨や骨盤を触るとゴツゴツと骨っぽく感じられます。
  • 食べムラや吐き気: お腹が空いた様子でフードに近づくものの、匂いを嗅いでお皿のふちを舐め、口をぺちゃぺちゃ鳴らして食べずに立ち去ります。
  • パサパサした毛並みとフケ: 脱水とだるさから毛づくろいの回数が減ります。
  • 活動量の低下: 睡眠時間がさらに長くなり、キャットタワーなどに登らなくなります。

IRIS(国際獣医腎臓病研究組織)のステージ分類

猫の慢性腎臓病は、空腹時の血中クレアチニンとSDMA値をもとに4段階に分類されます:

IRISステージクレアチニン値SDMA値腎臓の状態予後とケアのポイント
ステージ1(非窒素血症期)< 1.6 mg/dL15 - 17 µg/dL血液中に老廃物は溜まっていないが初期障害あり。予後は極めて良好。水分確保と原因の特定。
ステージ2(軽度窒素血症期)1.6 - 2.8 mg/dL18 - 25 µg/dL66〜75%の機能喪失。わずかな症状(飲水量増加)。余命は年単位。早期の腎臓療法食導入と血圧管理。
ステージ3(中等度窒素血症期)2.9 - 5.0 mg/dL26 - 38 µg/dL広範な障害。吐き気、散発的な嘔吐、貧血。数か月から数年。皮下点滴やリン吸着剤の活用。
ステージ4(重度窒素血症期)> 5.0 mg/dL> 38 µg/dL尿毒症が進行した末期状態。苦痛を和らげ吐き気を取り除く対症療法と保温・輸液。

さらに、以下の2つの指標でサブステージを判定します:

  • 尿蛋白(UPC比): 尿へタンパク質が漏れ出ていると腎組織の硬化が加速します。
  • 収縮期血圧: 160 mmHgを超える高血圧は網膜剥離や脳血管障害のリスクを高めます。

動物病院での診断に必要な検査

シニア猫の腎機能を調べるための基本検査です:

  1. 血液検査:

- クレアチニン・尿素窒素(BUN): ろ過しきれない毒素の蓄積度。

- SDMA: 腎機能の25〜40%が落ちた段階で上昇する高感度な早期発見マーカー。

- リンとカリウム: 腎障害を進行させる高リン血症と筋力低下を起こす低カリウム血症を監視。

- 血球計算(CBC): 造血ホルモン低下による非再生性貧血をチェック。

  1. 尿検査(比重測定):

- 脱水しているにもかかわらず尿比重が低い(等張尿:1.008〜1.015)場合、尿を濃縮できていない証拠になります。

  1. ドップラー血圧測定:

- 痛みがなく短時間で測れるシニア期の必須検査。

  1. 腹部超音波検査:

- 腎臓のサイズ縮小、皮質の萎縮、ペルシャ猫などに多い多発性嚢胞腎(PKD)の有無を調べます。

よくある合併症と治療法

病気が進むにつれて生じる不快な症状には、適切なお薬で対処します:

1. 尿毒症性胃炎と吐き気

血液中の老廃物が胃粘膜を刺激して強い胸やけを起こします。マロピタントや制酸剤を使用することで、再びごはんを食べられるようになります。

2. 二次性高血圧症

腎不全に伴う血圧上昇には、猫用の降圧薬(アムロジピンやテルミサルタン)を用いて目や脳血管を守ります。

3. 造血機能の低下による貧血

エリスロポエチン不足による貧血には、鉄剤の補給や造血刺激因子の投与を獣医師と相談しながら行います。

自宅でのケアと食事管理:暮らしを支える基本

治療の目的は失われた腎臓を治すことではなく、残された腎組織を保護し、病気の進行をできる限り遅らせることです。

1. 腎臓病用療法食(寿命を延ばす最も確実な方法)

獣医学の研究において、ステージ2や3の段階で専用の腎臓病食に切り替えた猫は、通常食の猫に比べて生存期間が2倍以上長くなることが証明されています。

  • リンの制限: 体内に余ったリンは腎臓を石灰化させ、寿命を縮める最大の要因です。
  • 良質なたんぱく質を適量に: 尿素窒素(アンモニアの元)の発生を抑え、吐き気を和らげます。
  • オメガ3脂肪酸(EPA・DHA): 腎臓の血流を助け、炎症を鎮めます。
  • 高カロリー設計: 食が細くなった高齢猫が体重を維持できるよう工夫されています。

切り替えのコツ: 決して1日で急に変えず、3〜4週間かけて現在のフードに少しずつ混ぜてください。ウェットフードを電子レンジで5秒ほど温めて香りを立てると、食欲が刺激されます。

2. 水分補給の徹底

脱水は腎臓への血流を悪化させ、さらなる負担をかけます。

  • 毎食ウェットフードを与える: 水分摂取の最も確実な手段です。
  • 味付けなしの手作りスープ: 鶏むね肉を塩やネギ類を入れずに茹でた出汁は、猫が喜んで飲みます。
  • 自宅での皮下点滴: ステージ3〜4では、獣医師の指導のもとで週に1〜2回、自宅で輸液(リンゲル液など)を行うことがあります。針を刺す痛みは一瞬で、脱水が補正されると見違えるように元気を取り戻します。

よくある質問

猫の慢性腎臓病は完治しますか?

残念ながら完治はしません。壊れて繊維化したネフロンは再生しませんが、療法食や点滴、投薬によって病気の進行スピードを大幅に抑え、天寿をまっとうさせてあげることが可能です。

急性腎不全と慢性腎臓病の違いは?

急性腎不全はユリ中毒や人の薬の誤飲、尿路閉塞などで急激に起こり、数時間以内の集中治療で回復する可能性があります。一方、慢性腎臓病は数か月から数年かけて静かに進む不可逆的な病気です。

なぜ口からアンモニアの臭いがするの?

腎臓から排出されなかった老廃物が唾液中に染み出し、口腔内の細菌によってアンモニアに分解されるためです。重度になると舌や歯茎に痛い口内炎ができます。

何歳から定期検診を始めるべき?

7〜8歳を迎えたら、年に1回はSDMAを含む血液検査、尿検査、血圧測定を受けることを強くお勧めします。ステージ1〜2で見つけることができれば予後は大きく変わります。

いつものおやつを与えても大丈夫?

市販の一般のおやつはリンや塩分が高く、腎臓に負担をかけます。腎臓病用の特別なおやつや、療法食のウェットパウチを少量小分けにしてあげるのが安心です。

Nekolife コミュニティ

猫と暮らしていますか?健康手帳をいつでも手元に

Nekolifeに愛猫を登録して、ワクチン履歴や体重を記録し、猫を愛する仲間と質問や体験を共有しましょう。

  • ワクチン・体重のデジタル記録
  • あたたかい猫好きコミュニティ
  • 参加でMeowポイント獲得
愛猫のパスポートを無料作成 →完全無料でずっと使えます

出典

  1. "IRIS Staging of CKD (modified 2023)". International Renal Interest Society (IRIS). iris-kidney.com
  2. "ISFM Consensus Guidelines on the Diagnosis and Management of Feline Chronic Kidney Disease". Journal of Feline Medicine and Surgery (JFMS), 2016; 18(3): 219-239. journals.sagepub.com
  3. "Chronic Kidney Disease". Cornell Feline Health Center, Cornell University College of Veterinary Medicine. vet.cornell.edu
  4. "Feline Chronic Kidney Disease: Nutritional Management". World Small Animal Veterinary Association (WSAVA) Global Nutrition Guidelines. wsava.org
  5. "Chronic Kidney Disease in Dogs and Cats". Merck Veterinary Manual. 2024年改訂. merckvetmanual.com