猫汎白血球減少症(パルボウイルス感染症):症状、診断と救急集中治療
猫汎白血球減少症(FPLV/猫パルボウイルス感染症)は、環境中で非常に高い生存能力を持つパルボウイルスによって引き起こされる、極めて感染力が強く致死的な感染症です。ウイルスは骨髄幹細胞や小腸の陰窩細胞など、細胞分裂が盛んな組織を急襲します。その結果、白血球数の壊滅的な急減(重度汎白血球減少)、激しい出血性腸炎、急速な循環不全・脱水を招き、直ちに入院下での救急集中治療が必要です。
このガイドは獣医師の代わりにはなりません。夜間・救急動物病院

このガイドの内容
1. パルボウイルスの病原性と感染経路
猫パルボウイルスはエンベロープを持たない小型DNAウイルスであり、酸や熱、乾燥に極めて強い耐性を示します。感染猫の糞便、嘔吐物、尿中に大量に排出され、直接の経口・経鼻感染だけでなく、人間の靴、衣服、キャリーバッグなどの媒介物(フォマイト)を介して屋内の完全室内飼育猫にも容易に伝播します。
体内に入ると、分裂速度の速い細胞へ選択的に侵入します:
- 骨髄およびリンパ組織: 白血球前駆細胞を破壊し、総白血球数が1,000/μL未満にまで激減します(汎白血球減少)。
- 小腸の陰窩(リーベルキューン腺): 腸絨毛が脱落して激しい水様性・出血性下痢を引き起こし、腸内細菌が血中に漏出して敗血症性ショックを惹起します。
- 妊娠猫の胎内感染: 胎児の小脳プルキンエ細胞の発達が阻害され、出生した子猫に永久的な運動失調(小脳形成不全)を残します。
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2. 特徴的な臨床症状と緊急警告サイン
2〜7日間の潜伏期を経て突発的に発症します:
- 水飲み皿の前でうずくまる姿勢: 激しい口渇感があるにもかかわらず、強い悪心のために水を飲むことができず、顔を水皿に近づけたまま動かなくなります。
- 頻回の嘔吐: 胃液や黄色い胆汁を含んだ泡状の嘔吐を繰り返します。
- 悪臭を伴う血便下痢: トマトジュース状の激しい出血性下痢便を排出します。
- 低体温: 発熱期から37℃未満への急激な体温低下は、敗血症性ショックと多臓器不全の兆候であり、命の危険が切迫しています。
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3. 迅速診断の手順
救急現場では以下の検査を即座に実施します:
- 全血球計算(CBC): 白血球の劇的な減少(好中球減少・リンパ球減少)を確認します。
- 糞便中パルボウイルス抗原検査(キット): 犬パルボウイルス抗原検出キットが高い交差反応性を持つため、猫の確定診断に広く活用されます。
- 血液生化学・電解質: 低カリウム血症、低ナトリウム血症、重度低アルブミン血症を評価します。
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4. 入院下での救急集中治療プロトコル
ウイルスを直接駆除する特効薬は存在しないため、自己免疫が回復するまでの徹底的な支持療法を行います:
- 積極的静脈点滴輸液: 電解質バランスを補正し、脱水とショックを是正するための持続点滴輸液。
- 広域スペクトラム抗菌薬の静脈投与: 腸管バリア破綻による細菌性敗血症を阻止するため、アンピシリン・スルバクタムやセファロスポリン系抗菌薬を投与します。
- 強力な制吐薬: マロピタント(セレニア)やオンダンセトロンの静注により嘔吐を抑制します。
- 早期経腸栄養: 嘔吐が沈静化次第、経鼻カテーテル等から流動食を微量投与し、腸粘膜の萎縮を防ぎます。
- 猫インターフェロンオメガ(rFeIFN): 早期投与によりウイルスの増殖を抑制し、生存率を改善するバイオ製剤として使用されます。
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5. 室内環境の消毒と感染隔離
- 感染猫は防水性のある専用隔離室で管理し、スタッフは使い捨てエプロンとシューズカバーを着用します。
- 消毒には必ず次亜塩素酸ナトリウム希釈液(漂白剤を水で約30倍希釈)を用い、10分以上接触させます。
- 傷のついたプラスチック製トイレや熱湯消毒(60℃以上)できない布製品は破棄します。
- 感染があった家庭には、最低1年間は未ワクチンの子猫を絶対に迎え入れないでください。
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出典・学術的参考文献
- Truyen, U., et al. (2009). Feline panleukopenia: ABCD guidelines on prevention and management. Journal of Feline Medicine and Surgery, 11(7), 538-546.
- Stuetzer, B., & Hartmann, K. (2014). Feline parvovirus infection: A review of European recommendations. The Veterinary Journal, 201(2), 150-155.
- Kruse, B. D., et al. (2010). Treatment of feline panleukopenia with recombinant feline interferon-omega. Journal of Veterinary Internal Medicine, 24(6), 1300-1304.
- Greene, C. E. (2012). Infectious Diseases of the Dog and Cat (4th ed.). Elsevier Saunders, St. Louis.
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