猫の気胸:原因・呼吸困難の症状と救急動物病院での処置
猫の気胸(ききょう)とは、肺と胸壁の間にある胸膜腔に遊離空気が異常貯留する病態です。本来保たれている胸腔内の陰圧が失われることで肺が弾性収縮して虚脱(圧排性無気肺)を起こし、急速に窒息・低酸素症に至る極めて危険な救急疾患です。
このガイドは獣医師の代わりにはなりません。夜間・救急動物病院

このガイドの内容
1. 気胸の病態:肺が虚脱するメカニズム
正常な猫の胸膜腔内はわずかな胸水によって潤滑され、常に大気圧以下の「陰圧」が保たれています。胸壁や気管支・肺胞壁が損傷すると空気が胸膜腔に吸い込まれ、陰圧が消失します。その結果、肺が縮んで換気量が激減し、致死的な低酸素血症と高炭酸ガス血症を引き起こします。
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2. 気胸の分類:外傷性・特発性・緊張性
原因と病態により分類されます:
- 閉鎖性外傷性気胸: 落下事故や打撲などで声門が閉じた瞬間に肺胞が裂ける、猫で最も多い形態です。
- 開放性外傷性気胸: 咬傷や刺傷で胸壁に穴が開き、外界と胸膜腔が交通する病態です。
- 特発性(自然)気胸: 外傷歴がなく、先天性肺ブレブ・ブラの自然破裂や肺腫瘍、寄生虫などで生じます。
- 緊張性気胸: 吸気時に空気孔が開き呼気時に閉じるため胸腔内圧が上昇し続け、静脈還流を遮断する超急性病態です。
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3. 臨床症状と起座呼吸姿勢
気胸を発症した猫は酸欠から逃れるため特徴的な姿勢をとります:
- 呼吸数が毎分60〜80回を超え、口を開けて苦しそうに呼吸する(開口呼吸)。
- 起座呼吸姿勢:伏せの状態で首を前に伸ばし、肘を外側に広げて胸郭を最大限広げようとする。
- 歯茎が紫色になるチアノーゼや極度の蒼白、背側の肺胞呼吸音の減弱・消失。
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4. 救急トリアージと胸腔穿刺(排気)
呼吸困難の猫にとって、保定や検査によるストレスは心停止の引き金となります:
- まず酸素ケージまたはフリーフロー酸素で安静を保ちます。
- 緊急胸腔穿刺:背側第7〜9肋間から翼状針や静脈留置針を刺入し、三方活栓とシリンジで空気を速やかに脱気します。
- TFAST超音波検査で肺のスライディングサイン消失を確認し、安定するまで無理なX線撮影は控えます。
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5. 胸部ドレーン留置と予後
穿刺後も空気が再貯留し続ける場合は、鎮静下で胸部ドレーンを留置して持続排気を行います。オピオイド系鎮痛薬で胸部痛を和らげます。迅速に初期減圧処置が行われた場合の外傷性気胸の救命率は良好です。
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出典・学術的参考文献
- Silverstein, D. C., & Hopper, K. (2015). Small Animal Critical Care Medicine, 2nd ed. Elsevier.
- Mooney, E. T., et al. (2012). Spontaneous pneumothorax in 12 cats. J Feline Med Surg, 14(6), 384-391.
- Puerto, D. A., et al. (2002). Pneumothorax in cats: 67 cases. JAVMA, 220(11), 1670-1674.
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