雄猫の尿道閉塞(閉塞性FLUTD):緊急診断、カテーテル導尿と救急処置

雄猫の尿道閉塞(いわゆる「尿道詰まり」「おしっこが出ない状態」)は、小動物救急医療において極めて緊急度が高い致命的疾患です。雄猫特有の極めて細い陰茎尿道構造のため、炎症性粘液と結晶が凝集した「尿道栓子(プラグ)」や微小結石が詰まることで排尿が完全に遮断されます。迅速な閉塞解除を行わない場合、代謝老廃物の蓄積と血中カリウム値の危険な急上昇(高カリウム血症)により、24〜48時間以内に致死的な不整脈や心停止を引き起こします。

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このガイドは獣医師の代わりにはなりません。夜間・救急動物病院
動物病院の救急手術台で緊急尿道カテーテル留置処置を受ける雄猫
Foto: Nekolife
このガイドの内容

1. 雄猫の尿道閉塞の病態と原因

雌猫の尿道が太く伸展性に富んでいるのに対し、雄猫の尿道は陰茎内で著しく細くなっています。主な閉塞の原因は以下の通りです:

  • 尿道栓子(プラグ): 閉塞の60%以上を占めます。膀胱炎による炎症性タンパク質(粘液、剥離上皮細胞、赤血球)とストラバイト結晶(リン酸アンモニウムマグネシウム)が練り合わされたゼリー状の栓です。
  • 尿路結石(ウロリス): 膀胱内で形成されたシュウ酸カルシウム結石やストラバイト結石が尿道先端に嵌頓します。
  • 尿道攣縮と浮腫: 特発性膀胱炎(FIC)による激しい疼痛と神経原性炎症により、尿道周囲筋が激しく痙攣して管腔を完全に閉鎖します。

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2. 危険な初期症状と見分け方

症状は数時間単位で急速に悪化します:

  • 頻尿・しぶり(排尿困難): トイレに何度も出入りし、排尿姿勢をとって激しく唸り声をあげますが、ポタポタと血尿が数滴垂れるか全く出ません。
  • 生殖器の過剰なグルーミング: 陰茎部を執拗に舐め回し、包皮から露出した陰茎は暗紫色に鬱血しています。
  • 粗相(トイレ外での排尿行動): ひんやりした洗面台や浴室の床で排尿しようと試みます。
  • 尿毒症末期症状: 24時間を経過すると嘔吐、極度の沈鬱、低体温、徐脈(脈拍数の低下)が現れ、危険な昏睡状態に陥ります。

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3. 致死的高カリウム血症の脅威

尿の排泄が遮断されると、腎臓からカリウムを排出できなくなります。血清カリウム値の上昇(> 7〜8 mEq/L)は心臓の伝導系を麻痺させます:

  1. 心電図でのP波の消失、テント状T波の出現。
  2. QRS群の延長と重度の洞性徐脈。
  3. 心室細動から心停止。

獣医師は心筋を電気的に安定させるため、10%グルコン酸カルシウムを緩徐に静脈投与し、続けて速効型インスリンとブドウ糖を投与してカリウムを細胞内へ移動させます。

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4. 救急尿道閉塞解除と入院集中管理

心血管系の安定化後:

  • 鎮痛と鎮静: オピオイド(ブプレノルフィン等)を用いて激痛と尿道痙攣を緩和します。
  • 逆行性水圧推進(フラッシング): 滅菌温生理食塩水を注入しながらカテーテルを優しく進め、尿道栓子を膀胱内へと押し戻します。
  • 留置カテーテルの装着: 柔軟なカテーテル(Slippery Sam等)を24〜48時間留置し、閉鎖回路型採尿バッグへ接続します。
  • 閉塞後利尿(POD)の管理: 閉塞解除後、1時間あたり10〜30 mL/kgもの多尿が生じることがあり、失われた水分と電解質を同量の点滴輸液で厳密に補填します。

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5. 再発予防と会陰尿道瘻形成術(PU手術)

環境や食餌の改善を行わない場合、約3割の猫が数か月以内に再閉塞します:

  • 水分摂取量の劇的増加: ウェットフードへの完全切り替えや給水器の増設により、尿比重を低く(< 1.030)保ち結晶形成を防ぎます。
  • ストレスマネジメント: 環境エンリッチメントとフェロモン製剤(フェリウェイ)の導入。
  • 会陰尿道瘻形成術(PU手術): 閉塞を繰り返す猫や尿道損傷のある猫に対し、狭い陰茎尿道を切除して骨盤尿道を皮膚に直接開口させ、雌猫のような広い排尿口を永久的に形成する外科手術です。

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出典・学術的参考文献

  • Bartges, J. W., & Callens, A. J. (2015). Urolithiasis and urethral obstruction in cats. Veterinary Clinics of North America: Small Animal Practice, 45(4), 741-785.
  • Cooper, E. S., et al. (2010). Evaluation of risk factors for recurrence of urethral obstruction in cats: 192 cases (2004–2008). Journal of the American Veterinary Medical Association, 237(12), 1461-1466.
  • Francis, B. J., et al. (2010). Post-obstructive diuresis in cats with urethral obstruction: 61 cases (2007–2009). Journal of Feline Medicine and Surgery, 12(8), 618-624.
  • Hall, J., et al. (2017). Outcome of perineal urethrostomy in 86 cats: A retrospective study. Veterinary Surgery, 46(8), 1085-1092.
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