猫のIMHA:赤血球の自己免疫破壊・黄疸と救急輸血プロトコル

猫の免疫介在性溶血性貧血(IMHA)は、自己の免疫システムが誤って自身の赤血球を敵と認識し、抗体によって赤血球を次々と破壊(溶血)してしまう極めて重篤な血液救急疾患です。急速に進行する重度貧血により全身組織が重篤な酸欠(組織低酸素症)に陥り、生命の危機に直結します。

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このガイドは獣医師の代わりにはなりません。夜間・救急動物病院
動物病院で血圧測定と貧血の診察を受ける猫
Foto: Nekolife
このガイドの内容

1. IMHAの病態:赤血球破壊のメカニズム

赤血球膜上の抗原に自己抗体(IgGやIgM)が結合すると、脾臓や肝臓の貪食細胞が赤血球を取り込んで破壊する「血管外溶血」や、補体活性化により血管内で赤血球が直接破裂する「血管内溶血」が発生します。猫ではヘモグロビンの特性上、酸化障害も重なりやすく急激に悪化します。

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2. 原発性と続発性の原因(ヘモプラズマと猫白血病)

猫のIMHA診断では原因探索が最も重要です:

  • *猫ヘモプラズマ症(Mycoplasma haemofelis):* ノミやケンカ傷を介して赤血球表面に寄生する細菌。猫における溶血の最多原因です。
  • レトロウイルス感染(FeLV・FIV): 骨髄での造血異常や異常免疫反応を惹起します。
  • 薬物・酸化性物質: メチマゾールやタマネギ中毒による溶血。
  • 腫瘍性疾患: リンパ腫など。

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3. 危険な初期症状:蒼白・黄疸・血色素尿

酸素運搬能力が失われることで以下の症状が現れます:

  • 歯茎や舌が血の気を失い陶器のように白くなる。
  • 破壊されたヘモグロビンがビリルビンに変換され、白目や皮膚が黄色くなる黄疸。
  • 尿が茶褐色やコーラ色になる血色素尿。
  • 頻脈、心雑音、極度の脱力と食欲廃絶。

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4. 確定診断に必要な検査

CBC検査でのヘマトクリット測定(しばしば10〜15%以下まで急落)、スライド上での生理食塩水自己凝集試験、直接クームス試験、そして免疫抑制剤投与前のヘモプラズマPCR検査を行います。

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5. 救急治療:輸血と免疫抑制

治療はプレドニゾロンなどの免疫抑制療法と、感染を考慮したドキシサイクリンの投与を行います。重症例では輸血が必須ですが、猫は同種自然抗体を持つため、血液型判定とクロスマッチ(交差適合試験)を怠るとアナフィラキシー性急性溶血で即死するため絶対厳守です。

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出典・学術的参考文献

  • Garden, O. A., et al. (2019). ACVIM consensus statement on IMHA. J Vet Intern Med, 33(2), 313-334.
  • Swann, J. W., et al. (2019). ACVIM consensus statement on IMHA treatment. J Vet Intern Med, 33(2), 341-372.
  • Tasker, S. (2010). Haemotropic mycoplasmas in cats. J Feline Med Surg, 12(5), 369-382.
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