猫の吐血と血便:消化管出血の原因と緊急動物病院対応
猫の吐血(ヘマテメシス)や便への血液混入(タール便・血便)は、消化管粘膜の重篤な出血を示す極めて緊急性の高い臨床兆候です。鮮紅色の鮮血であっても、胃酸で分解された「コーヒー残渣(かす)様」の嘔吐や黒色タール便(メレナ)であっても、重度の胃潰瘍、異物誤飲による穿孔、悪性腫瘍、殺鼠剤中毒などの重大な疾患が潜んでおり、致死的な循環血液量減少性ショックを防ぐため直ちの受診が必要です。
このガイドは獣医師の代わりにはなりません。夜間・救急動物病院

このガイドの内容
1. 猫における消化管出血の臨床的分類
出血の性状と色調から発生部位を推測します:
- 吐血(ヘマテメシス): 血液の混ざった嘔吐。食道や胃の活動性出血では鮮赤色を呈し、胃酸に触れて酸化されるとコーヒーの粉のような茶褐色の顆粒状になります。
- メレナ(黒色タール便): アスファルトのように真っ黒で粘り気があり、腐敗臭を放つ便。胃や上部小腸からの出血が消化管を通過する間にヘモグロビンが分解されて生じます。
- 鮮血便(ヘマトケジア): 大腸や直腸、肛門からの新鮮な赤色血液が付着した便。
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2. 消化管出血を引き起こす危険な原因
猫の消化管出血は決して放置してはならない疾患のサインです:
- 薬物性胃潰瘍: 人間の解熱鎮痛剤(イブプロフェン、アスピリンなど)の誤食は、胃粘膜保護因子を破壊し数時間で重篤な胃潰瘍を形成します。
- 線状異物・鋭利な異物の誤飲: 針付きの縫い糸や鋭利な骨が消化管を切り裂き、穿孔性腹膜炎を引き起こします。
- 消化器系腫瘍: 消化器型ハイグレードリンパ腫や腺癌が粘膜を深く潰瘍化させます。
- 殺鼠剤(クマリン系)中毒: 抗凝固性殺鼠剤の誤食によるビタミンK活性阻害で、全身性の自然出血が発生します。
- 重度の鉤虫症などの寄生虫感染症。
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3. 循環虚脱とショックの危険サイン
急速な失血は全身の血液循環を破綻させます:
- 極度の粘膜蒼白: 歯肉や結膜がチョークのように真っ白に変色。
- 重度の低体温: 直腸温が37℃を下回り、肉球や耳介が氷のように冷たくなります。
- 貧血性頻呼吸: 酸素を運ぶ赤血球が枯渇するため、肩で息をするような浅く速い呼吸を示します。
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4. 動物病院での緊急検査と確定診断
救急外来では迅速な鑑別が行われます:
- ヘマトクリット値(PCV/TP): 急性貧血の進行度と血管内容積の減少度合いを判定。
- 凝固プロファイル(PT/APTT)および血小板数: 殺鼠剤中毒やDIC(播種性血管内凝固)の除外。
- 救急腹部超音波検査(POCUS): 胃壁の肥厚、潰瘍穿孔、腸重積、腹腔内遊離液の有無を瞬時に評価。
- 内視鏡・開腹手術: 異物が確認された場合や、内科的止血が困難な動脈出血に対して実施されます。
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5. 集中治療と救命プロトコル
血圧維持と止血粘膜保護を最優先します:
- 輸液療法と輸血: 細胞外液の補給による循環血漿量の確保、およびヘマトクリット20%未満での適合猫全血輸血(A型・B型・AB型のクロスマッチ)。
- 高用量プロトンポンプ阻害薬(PPI): オメプラゾール等の静脈投与により胃内pHを上昇させ、潰瘍部位の血栓形成を促進します。
- スクラルファート経口懸濁液: 潰瘍面に直接結合してペプシンや胃酸から病変部を強力に保護します。
- ビタミンK1製剤: 殺鼠剤中毒が疑われる場合の特異的解毒薬。
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出典・学術的参考文献
- American College of Veterinary Internal Medicine (ACVIM) - Gastrointestinal Bleeding. https://www.acvim.org
- Merck Veterinary Manual - Hematemesis and Melena in Small Animals. https://www.merckvetmanual.com/digestive-system/gastrointestinal-bleeding/hematemesis-and-melena
- European Society of Feline Medicine (ISFM) - Clinical Emergency Guides. https://icatcare.org
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