猫の三炎(トリアディティス):胆管炎、膵炎、IBDの同時発症と緊急治療
猫の三炎(トリアディティス / Feline Triaditis)とは、猫の腹腔内にある3つの重要な消化器官系、すなわち肝胆道系(胆管炎/胆管肝炎)、膵臓(急性または慢性膵炎)、および消化管(炎症性腸疾患/IBD)が同時に炎症を起こす重篤な複合症候群です。この特異な併発は偶然ではなく、猫固有の解剖学的構造に起因しています。猫では総胆管と主膵管が合流して単一の共通管となり十二指腸乳頭へ開口しているため、消化液の逆流や腸内細菌の上行感染が極めて起こりやすいのです。
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病態生理と臨床症状
猫の8割以上は副膵管を欠いており、十二指腸内の細菌叢密度も高いため、慢性嘔吐や消化不良による十二指腸内圧上昇が直接膵臓や胆嚢への逆流を引き起こします。症状としては重度の沈鬱、食欲廃絶(48時間以上の絶食は致死的な肝リピドーシスを誘発)、胆汁性嘔吐、黄疸(白目や耳介の内側が黄色くなる)、および前腹部の激しい疼痛反射が挙げられます。
確定診断と入院集中治療
血液生化学検査(肝酵素上昇、総ビリルビン高値)、特異的猫膵リパーゼ(fPLI)、ビタミンB12濃度測定、腹部高解像度エコー検査を組み合わせて診断します。治療は入院下での積極的な電解質補正点滴、オピオイド系鎮痛薬(ブプレノルフィン)による疼痛管理、制吐薬(マロピタント)、経鼻・食道カテーテルによる早期経腸栄養、および細菌性胆管炎に対する適切な抗菌薬投与が必須となります。
出典・学術的参考文献
- Simpson, K. W. (2015). Pancreatitis and triaditis in cats: clinical perspectives. Journal of Feline Medicine and Surgery, 17(9), 706-716.
- Fragkou, F. C., et al. (2016). Prevalence and clinicopathological features of triaditis in a prospective cohort of cats with inflammatory bowel disease. Journal of Veterinary Internal Medicine, 30(4), 1031-1045.
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